ゲーム機本体がないので、頭の中で一人テトリスをしていた。
AとBとC、三つの音楽が鳴り響き、次々落ちてくるブロックを
消しながら、視界の隅で猫を見つけた。
虎柄の猫は俺を引っかき
まわす生き物なのだ。 案の定、腹を見せながら俺の両手を
ボロボロにする。
脳内は積まれたブロックによって、俺の居場所がなくなって
いたので、脳の外にも権利を主張する事にした。
視界の全ては
俺のものなので、この猫を持ち帰る。 まずは引っ掻き癖を直す
べきだ。 ここではっきりと断っておくが、虐待などしない。
だいたい猫には首輪がついているので、他に飼い主がいるはず
なのである。
猫と俺との生活が始まった。 俺は一人テトリスを続けながら
猫のしつけをし直す。 猫缶とから揚げ以外食べないし、
部屋中の漫画や小説で、これ見よがしに爪砥ぎする猫を追いかけ
ながら、やっとテトリス棒がきた。 しかも連続だ。
ブロックの高さは
12段が8段となり、8段が4段となる。
最後の棒が降りたとき、脳内革命が終わるのだ。
本を破りつづける猫を見て、俺は左頭のあたりに置かれた、
コントローラーを操作した。 ゆっくりと降りたテトリス棒で、
ブロックは5段になった。
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